ユング心理学において、集合的無意識の領域にあり、人類の心に共通してある概念として、
元型 アーキタイプ
があります。
前回書いたアニマ、アニムスも含まれています。
今日は元型の中の
グレートマザー
についてです。
グレートマザー (太母)
昔から大地母神としてほとんどの、農耕をする国で捉えられてきました。
大地から草が生える、食物が生まれる、母なる大地です。
多くの国の神話で見られます。
日本でいえばイザナギ。また縄文時代に土偶として作られた女神たち。
ギリシャ神話のガイア。
メソポタミアのイナンナなどです。
また、アニマとして、キリスト教のマリアをあげましたが、母としてのマリア像はグレートマザーといえます。
仏教では観音様がいます。
全てのものを産みだし、育てる。包み込み、守ってくれる、全能の存在です。
反面、全てのものを飲み込んでしまう恐ろしさがあります。子供を束縛し、自立を妨げるような母親像です。
鬼婆や鬼子母神のイメージが重なります。
グレートファザー 老賢者
太母に対して、父なるものの元系がグレートファザーです。
絶対的な力を持った存在で、育て、導いてくれる、権威ある人物像です。
キリスト教圏の、髭をはやした白髪の、杖をもった神さま、のイメージ。
中国の老子、
厳しく、公平に導いてくれる、指導者です。
グレートマザーが農耕民に自然発生的に生じたのに対し、グレートファザーは、牧畜をなりわいとした、古代ユダヤなどで例外的に発生したと言われています。
牛を飼う中で、優秀な一匹の雄牛の価値がとても重要なのを学んでいたから、だそう。
そしてそれは、後の西洋文明の発展に大きな影響を与えています。物質的に豊かになれたのは、自立的、男性的な生き方を選んできたから。
私含め、日本人には少しピンと来ないものかな?と感じます。
日本人は、非常に女性的な自我を、もった国民生だそう。農耕で、尊び生きてきたからですね。
私が、グレートマザー、グレートファザーで思いついたのは、またまたジブリ。
崖の上のポニョのお母さん。グランマンマーレはそのままグレートマザーと言い換えられます。
海そのものであり、ポニョ達海の生物皆を産んだ母であり、優しく包み込む、そして大きい!存在。一方、全てを水の中に飲み込んでしまう、恐ろしい存在です。ポニョも「お母さん大好き、すごーく怖いよ」と言っていました。
一方のグレートファザー。ポニョでは、父たちは頼らない。ポニョの父フジモトも情けないですし、宗介の父はほとんど不在です。
やはり、日本人宮崎監督の無意識には、父なるものの元系は弱めのよう。
ただ、「君たちはどう生きるか」では、主人公眞人の大おじが、グレートファザー的です。
的、なのがポイントで、塔の世界を全て作った創造主ではあるけど、もう辞めたがっていたり、そこに悪意があったことを告白しています。完全な力を持った存在、とは言い切れなく、そこが良かったです。
ジブリ作品をユング心理学で捉えての考察はとても楽しいので、改めてやってみたいですが、また別の機会に。
グレートマザー、グレートファザーの元型は、時にマザーコンプレックスやファザーコンプレックスとして表れ、夢の中にあらわれることもありますし、実の母父に投影してしまい、人を非常に苦しめることがあります。
ですがこれらの元型を投影するのではなく、認めて受け入れることで、自己の成長に繋がります。
特にグレートマザーは、色々な作品に見つけることが出来ると思うので、それを見つけるのが楽しみです。